日本のバカラ愛好家たちが悶々とした日々を過ごすようになって久しい。韓国やマカオ、シンガポール、マレーシア、フィリピンなどにふらっと週末、出かけて行ってはバカラテーブルにかじりつき、チップを積み上げていたハイローラーも、嗜む程度のビギナーも、以前のように、渾身の絞りで勝負できる日がまだ遠い。
リアルカジノの王様と言えば、何と言ってもバカラである。2020年ぐらいから日本国内では人気ユーチューバーの影響もあって、テキサスホールデム・ポーカーが流行っているが、ランドカジノでは、ポーカーは隅に追いやられている。マカオやソウル、クアラルンプールのカジノでは、フロアの隅から隅まで延々とバカラテーブルが並び、プレーヤーの数も圧倒的にバカラが多い。2018年に国会でカジノ法案(IR整備法案)が成立したことで、日本国内にも近い将来カジノができる期待感から旅先でとりあえずバカラをやってみる、という人も増えてきている。
「バンカーが勝つ」か「プレーヤーが勝つ」か。それとも「タイ(同点)」か。そのどれかに賭ければいい単純なルール。「ツラ」や流れを読む人はいても、勝負の行方は完全なる運だ。ポーカーのように細かい役を覚えなくてもいいし、心理戦やほかの客との駆け引きもない。すなわち技術介入がほとんどなく、初心者も玄人も、国籍や年代を問わず、同じテーブルについて戦える民主的なところがバカラのいいところだ。バカラテーブルはどこか、博多・中洲の屋台に似ているという人もいる。雰囲気が良ければ、同席したプレーヤー同士で仲良くなり、互いに励まし、応援しあうようになっていく。プレイヤー全員が同じ出目で勝利した時の一体感は格別なものがある。
日本人が気軽にカジノに行けなくなったここ数年。バカラファンの受け皿となり、爆発的人気を博しているのがオンラインカジノだ。
2021年12月の共同通信の報道によると、スマートフォンやタブレットでバカラなどに賭けた日本からのアクセスは3年前の100倍以上となり、同年9月の1か月あたりでは8300万回に達したという。国別のアクセス数で日本は、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第3位だそうだ。
2020年末までの日本からのアクセスは1つのカジノによってほぼ独占されていたが、2021年以降は勢力図に変化が見え始めた。日本語対応の魅力的なカジノが次々登場し、月間アクセスが1000万件を超えるサイトが複数出てきた。
積み上げるチップの音や手触り。賭けに勝った時の隣人とのハイタッチ、そして喝采。リアルカジノでそんなバカラの醍醐味をまた味わえる時まで、オンラインカジノがバカラファンの心の穴を埋めてくれそうだ。